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株式会社静科

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    小型屋外ブロワーの騒音対策~「一人静 タイプD」を使用した防音カバーの設計ポイント・効果・今後の課題について

    こんにちは、製造部のズオンです。

    近年、住宅地や商業施設周辺に設置される機械設備において、騒音問題が深刻な社会課題となりつつあります。中でも屋外ブロワーは空調や排気、集塵など様々な用途で使用される一方で、その運転音が周囲に大きな影響を与えることが少なくありません。

    本記事では、「1100×680×1450mm」の屋外向け防音カバーを用いたブロワーの騒音対策事例を取り上げ、実際に行った施工内容、使用した材料、効果検証などをもとに、同様の悩みを抱える事業者や、施設管理者の皆様に役立つ情報を共有させていただきます(※今回の案件は写真非公開となります)。

    なぜブロワーの騒音が問題になるのか?

    ブロワー(送風機)はその構造上、モーターの回転音、ファンの風切り音、振動による共鳴音など、複数の要素が複合的に騒音を発生させます。特に屋外設置のケースでは、周囲に壁などの遮音物がないため、音が四方八方に拡散しやすく、遠くまで響くという特徴があります。また、以下のような状況では、特に近隣とのトラブルになりやすいです。

    • ブロワーが夜間にも稼働する(静寂な時間帯とのギャップが大きい)
    • 設置場所が住宅に近い(10m以内など)
    • 騒音レベルが継続的に65dB以上(会話が困難なレベル)

    こうした背景から、本格的な防音対策が必要とされます。

    事例紹介:小型ブロワーへの防音カバー設置

    今回の事例は、ある中小規模の研究施設にて使用されていた、小型屋外ブロワーに対して防音対策を施したものです。

    対象機器

    • ブロワー仕様:三相200V、1.5kW出力、毎分回転数3000rpm
    • 騒音レベル:稼働時 72dB(本体より1m地点で測定)
    • 設置環境:建物の外壁沿い

    防音カバー概要

    • 一人静 タイプD」 (t37mm)使用の5面体防音カバー
    • 外寸:幅1100mm×奥行680mm×高さ1450mm
    • 内寸:幅1017mm×奥行638.5mm×高さ1409.5mm
    • 左側面:配管用開口380x380mm
    • 天面と背面:ファン用開口

    設計ポイント①:密閉性と通気性のバランスを保つ

    防音効果を高めるには、できる限り気密性を高く設計する必要があります。一方で、ブロワーはモーターを使用しており、内部温度が上がりやすいため、通気口や放熱設計も非常に重要です。このため、今回のカバーには以下の工夫を施しました:

    • 開閉可能な点検扉には、防振ゴムガスケットを使用し、隙間からの音漏れを最小限に
    • 内部温度の上昇を想定し、必要に応じて強制排気ファンの増設も想定可能な設計に

    設計ポイント②: 振動の遮断

    ブロワー本体からの振動が防音カバーに伝わると、パネルが共鳴し音源になる場合があります。これを防ぐため、以下の点を重視しました。

    • カバーとブロワーの接点に防振ゴムマットを挟む
    • ブロワーの設置ベース自体にも防振ゴム脚を取り付ける
    • 内部吸音材を浮かせた形で貼り付ける(パネルとの間に空気層を作る)

    防音効果の測定結果

    施工前後で騒音レベルを測定し、その効果を確認しました。結果として、約10~15dBの騒音低減に成功しました。これは、一般的な「体感で半分以下の音量」に相当します。また、深夜帯でも近隣住民からの苦情が無くなったとの報告もあり、実用的かつ持続可能な対策であることが証明されました。

    今後の課題と提案

    今回の防音対策は一定の成果を挙げた一方で、以下のような改善余地も見つかりました。

    メンテナンス性

    完全に密閉された構造では、ブロワー本体の点検・清掃が困難になります。今回の設計では側面パネルを蝶番付きで開閉可能としましたが、将来的には引き出し式スライド構造などの導入も検討すべきです。

    結露・湿気対策

    屋外設置では、内部に湿気がこもるリスクが高まります。今回のカバーでは通風を確保しましたが、より確実な湿気対策として、調湿剤の設置や、換気用ファンのタイマー運転も検討の余地があります。

    耐候性の向上

    外装パネルは亜鉛メッキ鋼板を使用しましたが、長期的には塩害・紫外線・凍結等による劣化も懸念されます。耐候性を高めるために、粉体塗装仕上げやステンレス材の選定も将来的なアップグレード案として有効です。

    結論

    屋外ブロワーの騒音対策には、単なる吸音材の貼り付けだけでは不十分で、遮音・吸音・防振・通気・耐候性といった複数の観点を総合的に捉えた設計が必要です。今回ご紹介した「1100×680×1450mm」の防音カバーは、コンパクトながら十分な防音性能を持ち、中小規模の屋外設備に最適な一例です。今後、同様の課題に直面されている方々にとって、本記事が設計の参考となれば幸いです。

    必要であれば、施工図面のサンプルや吸音材の選定一覧別記事としてご用意可能です。ご希望があれば騒音相談WEBツールより、ご気軽にお問い合わせください。