チラー用防音ボックスの製作事例~排熱と騒音対策を両立した構造
こんにちは、製造部岩崎です。
本日の記事では「チラー用防音ボックスの製作事例」をご紹介いたします。
チラーとは? 騒音対策と排熱を両立する難しさ
チラーは、水や冷却液を循環させ、製造装置や各種機械の温度を一定に保つための設備です。工場の生産設備をはじめ、研究施設や検査装置など、安定した温度管理が求められるさまざまな場所で使用されています。
チラーから発生する騒音には、コンプレッサーやポンプの運転音、モーターやファンの回転音、冷却風による風切り音、配管や架台を通じて伝わる振動音などがあります。複数の音が同時に発生するため、運転中は連続的な機械音として周囲に広がりやすくなります。
こうした騒音を抑える方法として、チラー全体を防音ボックスで囲う方法があります。ただし、チラーは運転中に熱を発生するため、単純に密閉することはできません。内部に熱がこもると、冷却能力の低下や機器の停止、故障につながる可能性があります。
そのため、チラー用防音ボックスでは、騒音を抑えることと、必要な空気の流れを確保することを両立させる必要があります。
一人静タイプAを使用した1m角の防音ボックス
今回製作したのは、外寸が幅・奥行き・高さともに約1mのチラー用防音ボックスです。上記写真は、出荷前に社内で仮組みを行った際の様子になります。
ボックスの壁面と天面には、静科の防音パネル「一人静タイプA」を使用しました。一人静タイプAは、中音域から高音域までの吸音・遮音に効果を発揮しやすく、モーターの回転音やファンの風切り音などを含む設備騒音への対策に適したパネルです。
パネルの吸音面をボックス内部に向けることで、チラーから発生した音が内部で繰り返し反射することを抑えます。さらに、パネルの遮音性能によって、ボックスの外へ音が伝わることも低減する構造としました。
天面の四隅にはアイボルトを設けています。完成した防音ボックスはサイズが大きく、重量もあるため、吊り上げによる搬入や設置作業を行いやすいようにしています。防音性能だけでなく、現場での運搬や設置方法まで考慮した仕様です。
換気扇とサイレンサーで、空気を逃がしながら音を抑える
今回の防音ボックスでは、チラーから発生する熱を外部へ排出するため、背面に換気扇を取り付けています。ただし、防音ボックスにそのまま開口部を設けると、そこが音の通り道となり、内部の騒音も空気と一緒に外へ漏れやすくなります。
そこで、換気扇の外側にはサイレンサーを取り付けています。サイレンサー内部に空気の通り道を確保しながら、その途中で音を吸収・減衰させることで、熱を含んだ空気は外へ逃がし、音はできるだけ逃がさない構造としています。
防音ボックスでは、パネル部分の性能が高くても、換気口や配管口などの開口部から音が漏れると、全体の低減効果が小さくなることがあります。そのため、換気扇の風量だけでなく、サイレンサーの形状や開口面積、圧力損失なども考えながら設計することが重要です。
また、ボックスにはチラーの配管や電源コードを通すための切り欠きを設けています。正面下部には小型の点検扉を設置し、ボックス全体を取り外さなくても、必要な部分へアクセスできるようにしました。このように、設備の形状や操作位置に合わせて、配管用開口、配線口、点検扉、換気設備などを追加加工しています。

防音・排熱・メンテナンス性をまとめて考える
チラー用防音ボックスでは、ただ機械を囲うだけでは十分ではありません。騒音を抑える一方で、機器の発熱量に応じた換気を行い、配管や配線を通し、点検やメンテナンスができる状態を保つ必要があります。
今回の防音ボックスでは、中~高音域への効果に優れた一人静タイプAを使用し、換気扇の外側にサイレンサーを組み合わせました。さらに、配管用の切り欠き、点検扉、着脱可能な天面、吊り上げ用のアイボルトなどを設け、実際の使用や設置作業を想定した仕様としています。
こちらのボックスは社内の簡易測定において、15dB程度の騒音低減を確認しました。ただし、実際の低減量は、対象機器の音の性質、開口部の大きさ、設置環境、周囲の反射などによって変わります。そのため、設備の発熱量や必要風量、配管位置まで確認したうえで、個別に設計することが大切です。
静科では、チラーをはじめ、ポンプ、コンプレッサー、油圧ユニットなど、設備の形状や発熱条件に合わせた防音ボックスを製作しています。機械騒音や防音ボックス内の排熱でお困りの際は、静科ホームページのお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
