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株式会社静科

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    吸音性能を可視化する方法とは?吸音率・等価吸音面積でわかる数値比較

    こんにちは、製造部岩崎です。

    今年は出張が例年より多く、とくに近畿、四国地方へ伺う機会が格段に多い年でした。おかげさまで来年の引き合いも既にいくつか頂いておりますが、どのような一年になるのかは分かりませんので、今から年末に向けて準備していきたいと思います。

    さて、本日の記事では「吸音性能の可視化」についてお話しいたします。過去に垂直入射と残響室法については何度か触れておりますが、それ以外の方法についてもお伝えできればと思います。

    「吸音」について

    室内の音環境を考えるうえで「吸音」は非常に重要な要素です。

    吸音とは、音が壁や天井、床などの材料に当たった際に、反射されず熱などに変換されて失われる現象を指します。吸音性能が高いほど反射音が減り、残響が抑えられ、会話の明瞭性や快適性が向上します。

    しかし、吸音性能は見た目だけでは判断しづらく、「どれくらい吸うのか」を数値で示す必要があります。そこで今回の記事では、吸音性能を可視化・数値化する代表的な方法を紹介します。

    試験体を用いる測定方法(吸音率α)

    吸音性能を表す代表的な指標が「吸音率 α」です。これは、入射した音のエネルギーのうち、どれだけが吸収されたかを0〜1で表した値です。


    代表的な測定方法として、垂直入射吸音率測定(インピーダンス管法)残響室法があります。

    垂直入射法は、管内を伝搬する音を用いて材料表面に対して直角に音を当てる方法で、材料固有の特性を把握しやすいのが特徴です。

    一方、残響室法ではランダム入射音場を用いるため、実際の室内環境に近い条件で平均的な吸音率を求めることができます。

    これらの方法により、周波数ごとの吸音率を比較することが可能になります。

    残響時間から等価吸音面積を算出する方法

    吸音率 α に必ずしもこだわらず、空間全体の吸音性能を評価する方法もあります。

    その代表例が、残響時間の変化から「等価吸音面積」を求める方法です。


    残響時間とは、音源を止めた後に音圧レベルが60dB低下するまでの時間で、室内の響きやすさを表します。材料を設置する前後で残響時間を測定し、その差からサビンの式などを用いて等価吸音面積を算出します。

    この方法では、個々の材料性能というより「この空間にどれだけ吸音が追加されたか」を直感的に把握でき、実務的な比較に向いています。試験体に落とし込むことが難しかったり、実際の使用状況ベースでの数値化をしたい際は有効になる方法でしょう。

    まとめ(各方法の比較)

    吸音性能の可視化には、材料単体を評価する「吸音率 α」と、空間全体を評価する「等価吸音面積」という異なるアプローチがあります。

    精密な材料比較には試験体を用いた測定が有効であり、空間改善の効果確認には残響時間ベースの評価が適しています。目的に応じて指標を使い分けることで、吸音性能をより分かりやすく、実用的に比較することが可能になります。

    吸音性能は感覚的に語られがちですが、測定方法や指標を理解することで、数値として客観的に比較することができます。目的に合った評価方法を選び、音環境の検討に役立てて頂きたいと思います。