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株式会社静科

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    ライブ会場や音楽スタジオにおける音質の違いについて

    製造部岩崎です。

    先日はサッカー日本代表が王国ブラジル戦で史上初勝利をあげましたね。過去13試合、一度も勝っていない相手に前半2-0で負けており、普通なら折れてしまいそうなところを見事な逆転勝利。諦めない姿勢に勇気をもらいました。この勝利によって本番であるワールドカップでは、自国からの大きな期待と他国からの注目を集めるでしょうが、乗り越えていって欲しいと思います。

    さて、サッカーの話が出たのでスタジアム繋がりになりますが、本日の記事では「ライブ会場や音楽スタジオにおける音質の違い」というテーマでお話していきたいと思います。

    ライブ会場の音質はなぜ会場ごとに違うのか?

    ライブに行ったとき、「今日は音がよかった」「ちょっと聞き取りづらかったな」と感じたことはありませんか?実はライブの音質は出演アーティストや音響機材だけでなく、「会場の構造」に大きく左右されます。

    まず押さえておきたいのが、「音」は空気の振動であり、壁や天井に当たることで反響(エコー)を起こすという性質です。この反響が多すぎると、音がぼやけて聞こえたり、ボーカルの声がこもってしまったりします。

    たとえば東京ドームのような大規模な会場は、本来スポーツ観戦用に設計されているため、音響面では不利な面もあります。天井が高く、壁との距離も遠いため、音が跳ね返ってくるまでに時間がかかり、結果として「音が遅れて聞こえる」ように感じられることもあります。また、会場内が硬い素材で囲まれていると、音が吸収されずに反響し続けてしまい、全体がぼやけた印象になります。

    少し特殊なのが日本武道館です。元々武道の大会用に建てられた施設で、音響設計がなされていない部分があるため独特の反響があります。アーティストによっては「武道館の音はクセがある」と感じるといいます。

    一方、ライブハウス系の会場、たとえばZeppやLIQUIDROOMは、音楽ライブ専用に設計されているため、音響的には非常に優れています。吸音材と呼ばれる音を吸収する素材が壁や天井に多用されており、不要な反響を抑えることで、クリアで迫力ある音がダイレクトに伝わってくるのが特徴です。遮音性も高く、外の音が入りにくい、また音漏れしにくい構造になっています。

    音楽スタジオにおける音質の違いとは?

    ライブ会場ごとの音の違いを知ると、次に気になるのが「音楽スタジオ」の音質。アーティストが日々のリハーサルやレコーディングを行うスタジオでも、会場と同様に音質の差ははっきりと存在します。スタジオでは、音に対する「コントロール性」が何よりも重要視されており、そのための工夫が詰まっています。

    まず大きな違いは、「音をいかに“響かせないか”」という点です。ライブ会場ではある程度の反響が観客に臨場感を与える要素になりますが、スタジオではその反響はむしろ邪魔になります。特にレコーディングスタジオでは、余計な反響が入ると音が濁り、後からのミックスやマスタリングに悪影響を及ぼすため、「デッド(響かない)な空間」が求められます。

    そのため、スタジオでは吸音材がふんだんに使われています。スポンジのような素材や、木材に穴が空いた拡散板などが壁一面に施され、音が跳ね返らずその場で吸収されるようになっています。これにより、録音された音はよりクリアに、そして本来の音色に近い状態で収められるのです。

    一方で、完全に響きをゼロにすると音が不自然に感じられることもあります。そのため、反響の“量”を調整できる可変式のスタジオも存在します。壁や天井に吸音材を出し入れできたり、反響をコントロールするパネルを動かせる仕組みなどが採用されています。ジャンルによってはある程度の自然な響きが欲しい場面もあるため、こうした柔軟性のある設計はプロの現場では重宝されています。

    さらに重要なのが遮音性です。スタジオは外部の雑音を一切排除しなければならず、同時に、内部の音も外に漏れないように設計されています。壁の内部に空気層を設けたり、二重ドアや浮き床構造を取り入れることで、まるで「音の密室」のような空間が作られています。

    理想の音響空間のために~吸音の均一性に優れたパネル「SHIZUKA Stillness Panel」

    では、音楽を最高の状態で楽しむための「理想の音響空間」とは、どのようなものなのでしょうか? それは一言で言えば、「音がクリアで、必要な響きだけが心地よく残る空間」です。しかし、この理想を現実にするのは非常に難しく、繊細なバランスが求められます。

    まず基本となるのが吸音と反響のバランス。完全に音を吸ってしまう“デッド”な空間では、音が平坦になりすぎて臨場感が損なわれます。一方、反響が多すぎる“ライブ”な空間では、音が混ざり合いすぎて不明瞭になります。

    静科の音響用パネル「SHIZUKA Stillness Panel」は調音性に優れ、低い音から高い音まで均一に吸音できることが特徴です。このパネルを面積調整して壁面、あるいは天井として導入することで、好みの音響空間を作り出すことができます。音楽スタジオでも導入事例が多数あり、オーディオプロの方にご好評いただいております。※詳細については下記リンクをご参照ください

    理想の音響空間に“正解”はありませんが、大切なのはその場所で鳴らす音と、それを聴く人の目的に合わせて最適化されているかどうかです。音響とは芸術であり、コミュニケーションであり、そして科学でもあります。ライブ会場やスタジオの音空間はアーティストやエンジニア、そして関連企業の努力により日々進化しておりますが、我々の技術もその発展に少しでも貢献できていれば幸いです。

    導入事例①:和田 貴史様 スタジオ内壁面施工
    導入事例②:ST-ROBO様 スタジオ内天井施工