回転機器生産工場内の試験場の騒音対策~現場調査から仕様決定に至るまでの流れ
みなさんこんにちは、製造部の横山です。
初めて韓国に行くことが決まってから、不安を解消するためにこの1か月ほど、動画やインターネット記事を通じて情報収集を行いました。実際に調べてみると、日本にいるだけでは知り得なかった現地の習慣、便利なアプリなど、新たな発見の連続で興味深いものでした。事前に情報を得ておくことで、漠然とした不安も軽減され、安心して渡航準備を進めることができたと感じています。
余談はここまでにして、本記事では、今回の記事では、「回転部品の生産工場における試験場騒音への対策提案」についてご紹介いたします。
工場内試験場の騒音問題に対するご相談対応
ご相談をいただいたのは、某産業機械メーカー様で、製造拠点内にある試験場から発生する騒音が、従業員の作業環境に深刻な影響を与えているとのことでした。そのため、従業員の健康配慮および作業環境改善の観点から、早急な防音対策が求められた為、弊社にご相談を頂きました。
具体的には、試験対象となる機器の内部で音が反響し、150Hz〜1500Hzという低音域を中心とした非常に大きな反響音が発生しておりました。お客様の体感としては100dBを超える騒音レベルがあり、試験場の真上に位置する作業フロアでは、身体に響くような重低音が突き上げてくるように感じられるということで、改善が必要な状況でした。
しかしながら、対象エリアが非常に広範囲にわたるため、すべてを一度に対策することは難しく、まずは「対策を行った結果、効果が確かに感じられること」を重視し、段階的なアプローチで進めたいとのご要望をいただきました。最終的には、90dB以下への低減を目標とし、従業員の作業環境の改善を図る方針となりました。
現場調査・音響測定・課題の抽出
初回現場調査では、以下のポイントが明らかになりました。試験場の開口部分は、横約15m × 縦約6m × 高さ6mと広大で、さらに2階床部分にはグレーチング(約2m × 0.5mサイズ)が約200箇所存在し、これらも音の通り道となっていることが確認されました。音響測定では、250Hz〜1000Hzを中心に、6,000Hzまでの広範な周波数帯で、100〜120dBという高騒音レベルが記録されました。
これらの情報を元に、お客様と協議した結果、初期段階では「試験場開口部の一部」と「グレーチング部」の対策から着手する方針としました。グレーチング部分は透過性があり、騒音が上階に抜けやすいため、こちらの早期対策が効果測定にも適していると判断されました。
ただし、両エリアとも広範囲かつ構造的な制約があるため、防音パネルの設置には鉄骨下地や受け金具の準備が必須であり、設計・施工には慎重な検討が求められました。
低音域に強い「一人静 タイプL」による防音対策のご提案
測定結果を踏まえ、150Hz〜1500Hzの低音域で高い騒音レベルが観測されたことから、弊社では「一人静 タイプL」を採用した対策案をご提案いたしました。通常モデルである「一人静 タイプA」では500Hz以下の遮音性能がやや劣るため、今回は「タイプL」の使用が最適と判断しました。
提案内容としては、試験場の開口部には、新規で鉄骨下地を取付け、下地部分に防音パネルを取り付けた防音壁を設置し、2階のグレーチング部分には、開口と同形状の専用防音パネルを設置する方式を採用しました。施工性と効果のバランスを見極めながら、段階的に進める計画をご提示しました。
なお、お客様からは将来的に大開口部に対し、電動機構付きの稼働式パネルを設置するアイデアもありましたが、技術面およびコスト面の課題から、今回は見送りとし、将来的な検討課題といたしました。
仕様決定までの協議と対応
初回提案では、お客様のご予算に配慮し、ある程度仕様を省力化した案をご提示しましたが、その場合、競合他社と防音性能に大きな差が生まれないことから、「性能で明確な優位性が感じられる提案を望む」とのお声をいただきました。
これを受けて、改めて現場に再訪し、より詳細な寸法計測を実施するとともに、お客様の「絶対に外せない条件」を再ヒアリングしつつ、弊社だけでなく協力店も合わせて可能な対応を詳しくご提案いたしました。2回目の現地確認では、弊社製造部だけでなく、施工店の協力も得て、より実務的な視点から仕様を詰めていきました。
今回のように、工場や試験施設における低音域の騒音問題は、従業員の健康や作業効率に大きな影響を与える重要な課題です。弊社では、現地調査から音響測定、最適な防音パネルの設計・製作・施工に至るまで、一貫して対応を行っております。
工場や試験施設における騒音や振動など、「音」に関するお困りごとがございましたら、ぜひお気軽に弊社までご相談ください。WEB上でも簡単にご相談いただける「騒音相談WEBツール」もご用意しております。皆さまの職場環境の改善に、少しでも貢献できれば幸いです。