小型防音カバーの騒音測定実験~1/3オクターブバンド分析の結果
こんにちは、製造部Iです。
先日、会社の最寄駅の本厚木駅付近で、ひき逃げ事件があったそうです。自分もいつもよく使っている信号がない横断歩道だったので、後から事件のことを聞いてぞっとしました。車が歩行者を優先するのは本来は当たり前のことですが、自分の身を守るためにも、横断歩道があるからといって油断しないようにしたいと思います。
本日の記事では、「小型防音カバーの騒音測定実験」についてご紹介したいと思います。
30cm角程度の小型防音カバーを製作
今回製作したのは「一人静タイプA」を使用した小型の防音カバーです。簡単な仕様は以下のようになります。
- パネルには中~高音域の吸音と遮音に有効な「一人静タイプA」を使用
- サイズは約30cm角、床面開放の5面体カバー
- 配線通し用の3cm角ほどの開口
- ビスで固定されており、ドライバーで分解と組立が可能
小型かつ他の事例ほど複雑な加工がないシンプルな箱型防音カバーです。
今回は5面体ですが、内部に測定器を入れて実験をする場合などのケースでは、6面体にすることで吸音面を増やし高い効果を発揮することができます。
分解可能と記載しましたが、小型なのでそのまま持ち運ぶことも可能です。
騒音値の測定条件
今回の測定は以下の4条件において行いました。
騒音源直近1m
スピーカーから80~85dB程度のピンクノイズを発生させ、そこから約1mの地点で騒音源そのものの音を測定しました。
ピンクノイズとは雑音の一種で、低周波の音ほどエネルギーが大きく、高周波の音ほどエネルギーが小さくなるような特性を持っています。「ザー」というような、雨音や滝の音に似た音を発します。
こちらの条件は、防音カバーを付ける前、実際に騒音対策をする機械の音を想定したものです。
暗騒音
暗騒音とは、ある特定の音源を測定する際に、その音源以外の場所で発生している全ての音のことです。今回で言うと、スピーカーから出るピンクノイズ以外の音のことを指します。つまり、スピーカーの電源をOFFにした状態でその場所の音を測定したものになります。
騒音源をいくら対策したとしても、暗騒音がその環境における最大値に置き換えられるため、対策後の数値が暗騒音以下になることはありません。
防音カバー設置後(開口あり/なし)
防音カバーを設置した結果、どう数値が変わったかの測定です。距離は騒音源を測った時と同じ、直近1mです。
今回はカバーに配線用の開口が空いていましたので、実験的に開口をそのままにした場合と、簡易的に塞いだパターンの2種で測定してみました。
騒音源直近1mとこの値を引き算することで、何dB音が低減したかを算出することができます。
1/3オクターブバンド分析結果
これらの条件で測定したデータを1/3オクターブバンド分析した画像が以下のものです。

1/3オクターブバンド分析とは、音や振動を周波数ごとに分析する手法の一つで、1オクターブを3分割した周波数帯域で分析を行うものです。これにより、より詳細な周波数成分を把握することができ、騒音や振動の評価や対策などに活用されます。
横軸が周波数(音の高さ)で縦軸がデシベル数(音の大きさ)を表しています。こちらの測定データから読み取れることを以下にまとめてみました。
- 周波数が高くなるにつれて防音カバー設置後の音も小さくなる(低減値が大きくなる)⇒一般的に周波数が高い音は低減がしやすいと言われますがデータからもこれが分かります。
- 開口ありと開口なしでは1dB程度の差が発生⇒これはオールパス(特定周波数だけでなく全体の総合値)の値で、周波数を絞って局地的にみると5dB程度の差が出ているところもあります。当然穴を塞いだ方が良い結果になりますが、効果は1~2dB程度ということになります。
- 防音カバーの設置前後ではおよそ20dB程度の低減が見られました。周波数によっては25dB以上下がっているところもあり、体感でも1/4~1/5くらいにはなったように感じました。
事前にご相談頂ければ、防音対策後にこのような「測定データ+簡易的な報告書」をご提供することも可能です。ご入用の際はお申し付けください。
※測定は有償になる可能性がございます。予めご了承ください。