防音対策には透過損失と適切な製品選びが重要~製品ごとの特性や選定の指針について
皆様こんにちは。製造部の大澤です。
今回は「透過損失」についてお話いたします。
はじめに
静かな空間づくりでは、音を通しにくくする透過損失と、室内の響きを整える吸音を適切に組み合わせることが重要です。低い音は通りやすいため面密度のある層が有効となり、話し声などの中音域は快適性に直結します。高い音はわずかなすき間から漏れやすく、目地や貫通部の処理が成果を左右します。
一人静パネルの実測傾向(透過損失)
- 一人静タイプAは、会話帯域から高域にかけて概ね30〜40 dBの透過損失を確保し、低域は20 dB台から段階的に向上する傾向が確認されています。
- 一人静タイプLは、125 Hzでおよそ17.5 dB、500 Hzで28.1 dB、1 kHzで29.2 dB、2 kHzで30.8 dB、4 kHzで40.1 dB、5 kHzで45.6 dBという抜粋値が読み取れます。高域の伸びが明瞭です。


吸音の実測傾向(響きの整え方)
- 一人静タイプAは、500 Hz〜2 kHz付近で高水準の吸音率を示します。
- 一人静タイプLは、250 Hz帯域付近から吸音が立ち上がり、500 Hz〜1 kHzで高水準を維持し、2〜4 kHz帯でも安定します。この早い立ち上がりにより、低周波寄りの帯域で響きを抑えやすい特長があります。
グラスウールとの違い
グラスウールは室内の反射や残響を低減する吸音材であり、単体では漏れ音の低減は限定的です。漏れ音まで抑える計画では、面密度を備えた板材や多層パネルとの組み合わせが妥当となります。
帯域別の簡易比較(抜粋・dB)
数値は実測の抜粋値、グラスウールは面密度からの質量則による参考上限です。
構成 | 125 Hz | 500 Hz | 1 kHz | 2 kHz | 4 kHz |
---|---|---|---|---|---|
一人静 タイプA(透過損失 実測) | 22.0 | 25.4 | 31.0 | 約36.0 | 38.7 |
一人静 タイプL(透過損失 実測) | 約17.5 | 28.1 | 29.2 | 30.8 | 40.1 |
参考:グラスウール 50 mm(理論上限) | 約2〜3 | 約15 | 約21 | 約26 | 約33 |
吸音の観点では、タイプLは低周波側の立ち上がりが早く、低域の響き抑制に寄与しやすい点が特長です。
製品選定の指針
- 室内の聞き取りやすさを整える主目的では、グラスウール中心の構成が有効です。
- 隣室や外部への漏れ音低減が求められる場合は、面密度を備えた多層パネルをご採用いただくと効果が安定いたします。
- 低周波成分が目立つ環境では、タイプLの低周波寄りでの吸音立ち上がりを活かしつつ、必要に応じて板厚の見直しや二重化、制振の追加で透過損失の低域側を設計的に強化する構成が適しています。
- 高域の機械音や話し声の明瞭な遮りを重視する場合は「一人静タイプL」、会話帯域全体の底上げを重視する場合は「一人静タイプA」が有力となります。
まとめ
透過損失と吸音の両面を整えることで、確実な静粛化に近づけてまいります。一人静タイプLは低周波寄りの帯域で吸音が早く立ち上がる特長があり、低域の響き抑制を狙う場面で有効です。漏れ音低減まで求められる場合は、面密度の付与や二重化、制振の追加により、低域の透過損失も含めて最適化してまいります。
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