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株式会社静科

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    幼稚園・保育園の騒音対策に一言。防音壁は最善ではありません

    代表の高橋です。

    子供の育つ環境から保育園・幼稚園の騒音問題を提言

    待機児童の問題は、保育所の定員数、保育士の人数など政策的な課題が山積しております。また、受け入れ先地域となる保育園・幼稚園の騒音問題は依然として解決できておりません。どの課題も、子供を持つ親(働きに行けない)、重労働の改善(賃金、人数の改善)、静かな環境での生活(ライフスタイルの変化)など、各状況・立場によって優先事項が複雑に絡み合っております。この問題に対し、弊社では別の視点(子供の育つ環境)から提言させていただきます。また、考えの前提となる保育園の騒音対策に関しては下記の記事を参考ください。

    関連記事①:保育園の音環境づくりを考えます

    関連記事②:幼稚園・保育園の騒音対策に吸音施工提案

    関連記事③:「子供の声」は騒音か?子供の為の音環境を考えていきましょう

    子供たちの声を科学的に分析

    科学的に分析していけば、「騒音」と呼ばれる子供の声は歌やリズム運動を行ったとして80~90dbになります。このレベルは音圧的にはピアノを弾くレベルになります。しかし、室内での騒音レベルになりますので、一般的な家の壁で遮音していると考えると -15db程度下がります(65~75db)。65~75dbは大声で叫ぶ、大型掃除機の稼動レベルです。

    まだまだこのレベルですと騒がしく感じるはずですが、この壁の遮音レベルを30db低減させれば50~60dbになります。このレベルで外を走る車の音、人の話し声程度になります。これであれば、閑静な住宅街での保育園は無理だとしても、都内の幹線道路沿いでの保育所開設は周囲に問題の無いレベルとなるはずです。また、今の建築レベルでいえば、既存の建物が-15dbでさらに-15db(計-30db)の壁にすることは可能なレベルです。

    屋内の壁の遮音で十分な対策ができることが想定できます

    国の対策で防音壁の補助金がありますが、防音壁を造らずとも壁の遮音性能で十分な対策が取れる事が想定できます。屋外で遊ぶ場合は壁がありませんので声が聞こえてしまいますが、地域のプールや体育館を借りてレクリエーションする取組と併せれば、通常の生活レベルを過ごせるはずです。プールや体育館に行く際の子供の声が問題の場合は、マイクロバスで送る方法もあります。その際に人件費、賃借料などが発生するので国の助成金、プール、体育館を貸し出す地域での理解・協力が必要になります。

    ※なお、騒音源を0dbはほぼ不可能です。音は空気を振動させるため、空気の無い環境をつくるしかありません

    上記は保育所の数を増やす、地域住民に住む方への課題対策としての素人の勝手な想像ですが、今度は子供の育成の面から考えてみたいと思います。

    室内の反響音の基準・目安をつくるべき

    保育所に預ける親の気持ちは、「保育園落ちた日本死ね」に代表されるように、仕事と育児の問題があります。しかし、この言葉だけに引っ張られると、子供の健やかな成長を考える視点には到達できないかと思います。日本が死なない為には、単に保育所があればいいのか?そこが劣悪な環境で成長していく子供たちに悪影響を与えるとしたら?この視点をもって解説する人はメディアにいますか?

    例えば、室内で読み聞かせをする場合、反響していると音がかぶって聞こえにくくなります。これが幼児教育では理解力や発声の発達を妨げます。また、反響すればするほど音が増幅するので、音が外に漏れれば騒音の原因となります。前にも記載しましたが、海外では幼稚園の反響時間を考慮し、建築基準に取り入れております。日本では小学校からです。基準がない中での議論は果たして有意義でしょうか?基準が無ければ目安をつくるべきです。

    業界を超えた繋がりを構築し、子育てしやすい環境を造ることが私たちの使命

    弊社でもいろいろな成果を研究者より話を聞きますが、それぞれの研究は素晴らしいのに、横のつながりと発表方法が狭い為、一般的ではありません。例えば、子供の発声であれば言語学の研究になり、保育所の設計だと建築学になり、子供の発達の部分だと医療・福祉系になります。さらに対策をするには実際の保育所、施工店、吸音材メーカーの協力が必要になり、これらを一元化する動きは現在ありません。弊社は末端の吸音材メーカーに当たりますが、この流れに終止符を打つべく行動しております。同じ考えをもつ設計士や解決に悩む保育園、研究者に話をし縦・横のつながりを構築しております。

    少子化の今、親にとってだけでなく子供は社会全体で育んでいかなければいけません、その一言に尽きます。たとえ業界は異なっても政策・技術で子供を育てやすい環境を造ることが私たちの使命です。